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コラム:『デジタル遺産』としての暗号資産(仮想通貨)の相続②(相続税の問題)

コラム:『デジタル遺産』としての暗号資産(仮想通貨)の相続②(相続税の問題)

1 暗号資産(仮想通貨)と相続税
前コラム「コラム:『デジタル遺産』の法律問題」で解説を行ったとおり暗号資産に対する法的権利については不透明性が残るものの、暗号資産(仮想通貨)が財産的価値のあるデジタルデータであることは明らかといえます。
現在の法律における暗号資産(仮想通貨)の定義についてみてみると、「暗号資産」とは、「物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されているものに限り、本邦通貨及び外国通貨並びに通貨建資産を除く。次号において同じ。)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの」、「不特定の者を相手方として前号に掲げるものと相互に交換を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの」 とされています。
法律の規定上も財産的価値として認識されていることが分かります。

また、「仮想通貨に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」(令和元年12月、国税庁)(以下本項において「国税庁FAQ」といいます。)においては、暗号資産(仮想通貨)の相続について相続税が課税されることが明示されています(問26)。
  問題は、相続税算定の基礎となる暗号資産の評価方法や、暗号資産管理のための秘密鍵、ウォレットのパスワードが相続人において分からない場合の取り扱い等となります。

2 暗号資産(仮想通貨)の価額評価
前掲の「国税庁FAQ」においては、暗号資産(仮想通貨)の評価について、活発な市場が存在する暗号資産(仮想通貨)は、相続人等の納税義務者が取引を行っている仮想通貨交換業者が公表する課税時期における取引価格によって評価する、としています。
ビットコインやイーサリアム等のようにメジャーな仮想通貨で、取引所で取引が行われているものについては、相続発生時の取引価格により評価されるということになるでしょう。
また、「仮想通貨交換業者が公表する課税時期における取引価格」には、仮想通貨交換業者が納税義務者の求めに応じて提供する残高証明書に記載された取引価格を含むとされますので、相続人としては、このような取引価格を1つの基準とすることになると考えられます。
なお、活発な市場が存在しない仮想通貨の場合には、客観的な交換価値を示す一定の相場が成立していないため、その仮想通貨の内容や性質、取引実態等を勘案し個別に評価するとされ、具体的には、売買実例価額、精通者意見価格等を参酌して評価する方法などが挙げられています。

3 秘密鍵やパスワードが不明の場合は?
財政金融委員会における答弁においては、「パスワードを知っている、知っていないというようなパスワードの把握の有無というのは、当事者にしか分からない、言わば主観の問題・・・・・その真偽を判定することは困難・・・・・・相続人の方からパスワードを知らないという主張があった場合でも、相続税の課税対象となる財産に該当しないというふうに解することは課税の公平の観点から問題があり、適当ではないというふうに考えております。」との理由から、「パスワードとの関係でございますが、一般論として申し上げますと、相続人が被相続人の設定したパスワードを知らない場合であっても相続人は被相続人の保有していた暗号資産を承継することになりますので、その暗号資産は相続税の課税対象となるという解釈でございます。」との見解が示されています(第196回国会 参議院 財政金融委員会 第6号 平成30年3月23日)。
 暗号資産管理のための秘密鍵やウォレットのパスワードが相続人において分からない場合には、理論上、当該暗号資産を事実上取得できないにもかかわらず、相続税のみは発生するという事態が発生し得るということとなるため注意が必要です。
 もっとも、取引所を通じた取引により保有する暗号資産については、取引所の用意する相続手続との関係で、ウォレットのパスワード等の問題は解決する可能性はあると考えられます。

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(本コラムには私見が含まれており、また、具体的な問題の解決を目的とするものではありません。具体的な問題の解決については、個別具体的事情を示し、法律専門家への相談が必要となります。)

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